ネイルが剥がれ落ちても
左手中指のネイルが知らない間に剥がれていた。
きっと仕事の合間になにかに引っかけてしまったんだろう。
自分で塗ってる安物のジェルネイルだから、
いつもの私だったら
「あ〜あ、次は何色にしよかな〜」って
思ってそれで終わりなはずなのに、今回はちょっと違う。
この爪だけがあの日のままだった。
一生懸命巻いて結った髪も、
沢山悩んで決めた服も、
いつもより時間をかけて施したお化粧も、
その日の内に ほどいて、脱いで、落として、綺麗になくなってしまったけれど、
この爪だけは大好きな人に会ったあの日のまま数日が経っている。
剥がれ落ちて欠けている色を見つめて、
「あの日の思い出もこの爪の色みたいに、
知らない間に私の記憶から剥がれ落ちて、
いつか忘れちゃうのだろうか。」なんて、
死ぬほどエモーショナルで、センチメンタルで、ロマンチストな頭になったり、ならなかったり。
……なってません。これっぽっちも。スミマセン……
まぁ、自爪が割れてない事に安堵しつつ、
「とみたんの前で、きれいな手に見せてくれてありがとね〜ん」
ぐらいの気持ちは持ちながら、ジッと爪を見つめて労いました。
また大好きな人に会いに行く。
次は何色にしようかな。
ネイルが剥がれ落ちても、
この気持ちはこびり付いて剥がれないね。
「大好きだよ!いつもありがとう。またね、」